「柏原の主人は私よ!」


「雇い主は、あなたのお父様です。お忘れなく」



 ぐぅ……言い返せない。
 執事のくせに生意気ね。


 柏原の発言には、いつも隙がないのよ。面白味のない男ね。



 ああ……それに比べて、カッコよかったなぁ。


 彼みたいなイケメン男子と一緒に食事をしたり、乗馬を楽しんだりしたら凄く幸せだろう。


 柏原が邪魔しなければ2人きりで、カリブ海の小島に行くのも素敵かも。



「あの制服は、お嬢様の通われます学園に隣接する高校のものでした」


 柏原はまるで独り言のように小さな声で呟いた。


「調べられる?」


「それが、茉莉果お嬢様のお望みなら」



 やったわ!
 なんてユーモアのセンスがある面白味ある執事かしら!

 さすが、お父様が雇った男ね。一味も二味も違うわ!

 もちろん、私は柏原を食べたことがないからモノの例えよ?


「私の明るく華やかな演奏が終わるまでにお願い」

「かしこまりました」


 すると柏原は今日四度目の盛大な溜め息を吐いた。