「いい加減なのは、お嬢様です。先程から、私を誘っているとしか思えない。もっとさわってもらいたいと、懇願しているように見えますよ」


「そんなわけないじゃない……柏原なんてクビよ!」


「クビになるのなら、最後は存分に貴女を味わってから辞めさせていただきましょうか」


 柏原の顔が吐息のかかるほど私に近づく。艶々の唇が近づいてくるので、ギュッと目を閉じた。


 こんなの柏原じゃないわ。性悪なのは、元々だけど。

 今までこんな真似は、絶対にしなかった。


 まるで獲物を捕らえた猛獣のように、恍惚とした柏原が恐くて、これ以上見ていられない。



「今、この屋敷には貴女という女と、私という男しかおりません。貴女がどんなに泣き叫び、逃げ惑っても男の私には敵わない……。貴女の体は私によって好き放題弄ばれるのです。お分かりいただけますか? 茉莉果お嬢様」


 泣き叫び逃げ惑っても柏原には敵わない。


「か……柏原っ……わかったから」


 涙腺が緩んできてしまった。最近の私は少し涙脆いかもしれない。きっとそうよ。そうに決まってる。