「まあ、いいわ。お風呂の仕度をお願いね? 今日はゆっくりしたいから」


「かしこまりました、お嬢様。ですが、貴女は受け入れてもらえないかもしれないという心配はしていないのですか?」


え……?

うーん、そうだわ。
それもそうだわ。


もしお父様とお母様が屋敷にいるなら、まず必死に謝らなきゃだわ。



でも山の家は、お風呂が小さかったのが難点なのよ。

バシャバシャとばた足をしたら、湯槽のお湯が飛び出て半分以上なくなっちゃったのよ。





ステンドグラスの埋め込まれたチョコレート色した木の扉が勢いよく開いた。






「茉莉果ぁーっ!」



目の前が、真っ暗になった。


それが……お父様に抱き締められているからだと気がつく頃には、私は完璧に酸欠状態になっていた。



ぐ……苦しい……


あああ……

おばあ様が呼んでいる……

ついでに茉莉果ちゃんと、本当の両親も呼んでいる……


やっぱり茉莉果ちゃんは、私をそっちに呼びたいのかしら?



「あなたっーどいて! 交代よ!」


はあはあと肩で息をしながら、耳をつんざくソプラノボイスと華奢な体に抱き締められる。


「お父様……お母様……酷いこと言ってごめんなさい」