「紫音夫妻は確かに貴女を孤独にしているかもしれないが、貴女をどんな想いで引き取ったか、考えたことはありますか?」



石碑の後ろには、私が住んでいた街があり、更にその先には海が広がっている。

サーッと血の気がひいていく感覚と、竜司の船に乗った時のように意識が遠退いていく感覚に襲われる。


だけど柏原は、それを許してはくれない。




「大きく深呼吸をして……お嬢様、共に目に焼き付けておきましょう。この景色を……」



肺に酸素を送り込むと、柏原の優しい腕にすがり付く。



「柏原…………」


その腕は、優しく私を包んでくれていた。



「俺だって辛い……貴女は、何も悪くないのに……その幸せは犠牲の代償にあることを背負って生きていかなければならないのだから」


震えた声が、優しい頬擦りと共に私の脳内に刻み込まれていく。