「もう! どこをどうしたら、そんな美形に生まれてこれるのよ! もう……いいわ。で?」
車窓から、外の景色を確認してみる。
柏原は、車外に出ると私のコートを取り出してから右側の助手席のドアを開いた。
私は、素直に従い車から降りる。
コートに袖を通した。柏原が丁寧にボタンをかけてくれる。
そして柏原についていく。
「……ここは?」
少し歩き、そこは高台になっていると知る。
眼下に小さな街が見渡せ、その先には海……
「貴女が住んでいた街です。覚えていませんか?」
「そう……ぜんぜん覚えていないわ……」
住んでいた家とか、そういうのを見たら何か思い出すかもしれないけど……こんな高台から見下ろしても、何年も前の事を思い出すなんて不可能よ。
特徴ある建物がないかしら……?
何か思い出すかもしれない……と必死に街並みを見渡す。
「この辺りは土地開発が進み、街並みがかなり変わってしまったようです。海も埋め立てられ、海岸の形も変わってしまっていると聞きました」



