「─────お嬢様、目的地に到着いたしました……お嬢様っ!」



 眠いわ……


 このシート、快適なんだもの。もう少し眠らせてよ……



 頬を軽く叩かれて、しばらく沈黙。 そしたら、突然、口が塞がれた。



「……………っん!!」


 抵抗しようと右手をあげると、すぐに強い力で押さえつけられる。



「……んんっ!? はなし……てっ!!」


 顎を押さえつけられて、口を開いた隙に柏原の舌が深く侵入してきた。

 私の舌を絡めとって弄ぶ。

 散々好き勝手に口内を犯されたあと、短いため息。


「ため息つきたいのは私の方よ!」


「おや、目が覚めましたか? 申し訳ございません。助手席に、あまりにも可愛い顔をした無邪気な女が眠っておられたので……男の性(さが)ですね?」



むっ!?

また逆上がり?


 言葉とは裏腹に、態度は反省の色がない。

 もう一度、チュッと音をたてて口を塞ぐと意地悪そうな顔でクスクスと笑っている。




「柏原……その顔、わざと作ってるの?」


 柏原が、キスの前後に見せる笑顔は殺人的だ。


「心臓を鷲掴みに取り出されて、砂糖漬けにされたみたいな気分になるわ」



「お嬢様……なんとエグい例えをなさるのですか……この顔は、生まれつきです。ご容赦願いたい」