山を抜けると田園風景が広がり、そこを切断するように中央を抜けるハイウェイ。

 柏原は迷うことなくハイウェイにのり、速度をぐんぐんあげた。



 直接飲めるように改良された便利なティーポットには長旅を予測していたように、ハーブティが用意されている。


 それを一口飲み込み、深く座席に腰をかけ深呼吸をした。

 私の呼吸に合わせて、柏原がギュッと強く手を握りしめる。



 昨夜は、柏原がなかなか解放してくれなかったから眠くなってきちゃったわ。




「到着するまで、仮眠をとってください。そのように寝不足で疲れきった顔をされていると……少し困ります」


 反省しているような横顔に「柏原は、疲れてないの?」と質問をする。


「ええ、まったく」


 含み笑いを浮かべて、流し目で私を捕える。

 思い出したら恥ずかしくなって、顔が暑くなっちゃう。


 あんなとこから、こんなとこまで柏原に見られちゃったんだもの。


 しかも、あんな格好させられて、そんなとこまで柏原は……


「お嬢様」


「何よ?」


「その回想シーンは必要ありません」



「そ、そうね……」



 なんで、私の考えがわかったのかしら?



 底無しの体力の、変態執事。

 ずっと付き合ってたら、いつか私が死んじゃうわ……


「殺さない程度に楽しみますから……」




 寝ましょう。


 私は、執事から顔を背けると瞳を閉じた。