────午後の日差しがリビングに注ぐ、柏原は私の隣で本を読んでいる。


この家には大量の本がある。そのほとんどが、分厚いカバーの洋書。


空いた時間を、惜しむように丸太のソファに座りメガネをかけて集中する柏原。

長い足を組み、コットンシャツのボタンを胸元まであけて、リラックスして本を読んでいる。


この姿に胸がキュンキュンするのは何故かしら?

屋敷では、絶対にお目にかかれない柏原の姿だから?


柏原は、本に集中していて私の視線に気づかない。



「ねぇ……どんな内容のお話なの?」


「…………」


柏原は、不機嫌そうに顔をあげると……頬杖つく私をメガネ越しに睨みつけた。


「ローマ数字の歴史を辿った書物です。その数値の法則や、音楽理論においての音階の……」

「ローマスウジは、孤児なのかしら? 生き別れたお母様を探す旅のお話なのかしら?」

「全然違います」


柏原のくせに、在り来たりな話を読んでるから照れ臭いのね?

まあ、いいわ……


また柏原の綺麗な顔が分厚い書物に隠れてしまった。