もう難しいことは何も考えたくない、


柏原のためだけに生きて、柏原に溺れて生活できたら、どんなに素敵だろう……



「柏原、大好き」


首を持ち上げて、柏原にキスをする。

唇がちょっと触れて、私はまたラグに横になる。


その隣に、柏原も体を横たえた。



「お嬢様からのキスは格別ですね。力が抜けてしまいそうだ」


「柏原?」



「昨夜は一睡もしていないので……」



ラグの上で抱き合う。柏原は深呼吸すると、瞳を閉じた。

暖炉が暖かい。

それ以上に抱き合った体が暖かい。



「柏原?」


目を閉じた私の執事の体の力が抜けていく。


「あら、やだ……柏原が充電切れ」


眠ってしまった執事の胸の中で、私も目を閉じた。

この世界に、私と柏原しか存在しないんじゃないかってくらい静かな夜がきた。