「───ここでいいか? いつも隼斗とくるファミレスだけど」
やっとナツが足を止めた。呼吸を整えながら、その建物を見上げた。
ファミレス?
目の前には入った事のない奇抜な外観の建物がそびえ立つ。
「ナツと一緒なら、どこでもいいわ」
そうよ。本当に、一緒にいられるだけで幸せよ。
それだけで私は満足。
来い、ファミレス!
「────嫌ぁっ!」
やっぱりよくないわ!
「なんだよ。どこでもいいって言ったの茉莉果だ」
ガラスの扉を二枚開けて入った店内は、たくさんの人が賑やかに食事をしているレストランだった。
しかも訳のわからない不安定な音程の音楽が鳴り響いている。
通された席は窓際の明るい席だけど、私達の席の横を色んな人が通過していくし、落ち着いて食事の出来る席とは思えない。
「個室はないの?」
「あるわけねーだろっ」
信じられない……
なぜこの店の店長は個室を作らなかったのかしら?
「じゃあ、貸し切りにしましょう」