柏原からは、外の空気の良い香りがする。森林浴でもしてきたかのように、爽やかで良い香り。
「だって、初めて来た場所だもの」
「それもそうですね。貴女の大好物を作る為の食材や、茶葉、それに焼き立てシューで作られた、シュークリームを買ってきましたよ」
楽しそうに話をする柏原。だけど拘束しているタイをほどいてくれる気配も、私を抱き締めてくれる気配もない。
「柏原……」
「はい、お嬢様」
それは、とても従順そうな優しい執事の顔だ。
「タイをほどいて……」
私は、タイをほどいて……抱き締めてほしいのよっ!
「お断りいたします」
「なんでよ!」
「貴女は現在の私という男に囚われた"ただの女"だ。
そのタイを何時ほどくかは、俺が決める」



