ドキドキとする胸を両手でおさえて、制服に着替えているナツを待つ。

「柏原、先に屋敷に帰ってて」    

「しかし、お嬢様……」 

「大丈夫よ。二人きりになりたいの」


 執事が、一瞬思いっきり眉をしかめたのを私は見た。顔に感情だすなんて、駄目ね。

「帰って! 柏原」


 ナツが出てきたので、その腕に自分の腕をからめた。

 私も今日は学園から直接来たので制服のままだ。


 だから、コレは……


 そうよ!
 制服デート!


 雑誌やテレビの中で庶民がやっていた羨ましすぎるデートを自分も体感できるなんて目眩がしてきた。


「おい! ニヤニヤしながら歩くんじゃねーよ! 仲間だと思われるから離れて歩けよ! しかも、執事さん置き去りでいいのかよ!」

「いいの、いいの。行きましょう」


「なんか、俺……すげぇ睨まれてんだけど……」


 彼は相変わらず照れてばかりいるけど、なんといっても制服デートなのだからと……私はピタリと隣にくっついた。

 手は、どのタイミングで繋ぐのかしら?



「ナツどこに行くの?」

「駅まで」

「駅っ? そんなに遠く? 歩いたら五分はかかるわ」


「嫌なら帰れ」


 ブンブンと首を横に振り、ナツの隣をキープした。


 明日は筋肉痛だ……


 学校休んでアロママッサージの先生を呼びつけたほうがいいわね。

 最近は、柏原も独学でマッサージを学んでいるから柏原でもいいわね。うん、そうしましょう。柏原なら予約も要らないし、執事って本当に便利な代物だわ。


 とにかく五分も歩くなんて、気合いが必要だわ。