リムジンには、大きなトランクがいくつか積み込まれていた。

ミルキーピンク色の、トランクは私の旅行バックだ。


陽子さんが一緒に荷造りをしてくれたのだけど……彼女は一週間分もの荷物をギュウギュウに詰め込んでいた。


「こんなに着替えは要らないわ」と言う私を、彼女は寂しそうに微笑みかけながら無言で荷物を詰めていた。



お父様はさっきから一言も口を利いてくれない。
難しい顔したまま、やっぱり窓の外を見ている。




車は都会を抜けて、郊外の閑静な住宅地を走る。
一軒の大きな邸宅の門をくぐる。

邸宅の裏のは森が広がっている。

車でほんの数時間走っただけで、こんなに静かな場所に着くのね。






陽子さんがリムジンから降りて、私のミルキーピンクの鞄を車から降ろした。



「私達は、これから地方公演がある。ここは昔紫音家で使っていた別荘で保養所になっているんだ。中にはメイドもたくさんいるから寂しくはないよ。連絡もしてあるし、明日の朝食は好きなものを頼むといい」


「お父様、それって私が一人でここにいろって事なの?」



別荘からはメイドたちが出迎えに出てきてくれていた。


「明日には大河内先生が診察に来てくれる。もし不安な事があれば先生とよく話あえばいい」


昔から紫音家の主治医をしてくださっている先生だ。



「荷物をお預かりいたします」



メイドが私の鞄を運んでいく。