────私が、幼い頃住んでいたのは小さな小さな街だった。

今の住んでいる屋敷のように都会の真ん中にあるわけではなく、海の近くにある、とても静かな田舎街だった。



パパとママと、はじめての船の旅に私はとても興奮していた。


真っ白な大きな船が、私の住む街にやってきて、色んな街からお金持ちがたくさんやってきた。


それに乗って旅をする。




船には、私と同じ歳の紫音茉莉果ちゃんという可愛い女の子が乗っていた。

まだ小さいのに、船の上で茉莉果ちゃんはヴァイオリンを弾いていた。




一緒に船に乗っていた大人達も、彼女のヴァイオリンに聞き入っていた。



『ねえ? ヴァイオリンって難しいの?』


『難しくないわよ。ヴァイオリンは、音が一つしか出せないから♪ お母様がピアノを弾くの。ピアノは、とても難しいわ』


『ねぇ! 私にもやらせて~それに茉莉果ちゃんみたいなドレスも着てみたい!』



紫音茉莉果は、色んなモノを持っていた。

音楽の才能、色鮮やかなドレス、磨きあげられた靴……

羨ましかった。



『私、将来は作曲家のお父様が作った曲を、お母様と弾くのが夢なのよ。それから、お父様とお母様と世界中を演奏旅行をして回るの!』



それから、約束された華やかな夢……