謝罪の姿勢のまま動かない執事。

その口元には、ひげ面に殴られた傷がまだわずかに残っている。



その横顔は悲痛な表情で、こうなる事をあらかじめ予想していたようだ。




「茉莉果、お茶を飲みましょう。それから、荷物を整理するわよ」

「ええ、お母様……でも荷物って?」


お母様に、手を引かれて私は屋敷に入る。





「柏原くん、すまないが茉莉果はしばらくこの屋敷を離れさせる。君は、その間休みをとってもらいたい。数日間だが、それが一番いいと思っている」


「お父様!?」

「かしこまりました旦那様」


「柏原!? 嫌よ!」



柏原は、うつ向きながら大きく頷くと、さっと立ち上がり……そして不自然な程に優美で、優雅に会釈をすると

躊躇いもなく屋敷に背を向けた。





なによ!

大嘘つきじゃないの!



さっきは、ずっと一緒にいてくれる……って誓ってくれたのに!