「大好きよ……柏原。ずっと一緒にいてね」



私は、本物の『紫音茉莉果』ではない。

あの屋敷に飼われている偽物だ。

それでも、この執事だけは失いたくないわ……絶対に




「約束いたしましょう。私は、貴女と共に生きていきます……

だから、私だけを信じてくださいますか? "茉莉果お嬢様"」



ギュッと力をこめて、執事の燕尾服の袖を握り締めた。

誰かが悪いわけじゃない。
お父様もお母様も、おばあ様も私を大切に育ててくれていた。




ただ血が繋がっていないだけ……



私には、執事がいる。
これからも柏原が、一番近くにいてくれるならなんの問題もないわよね?



「信じるわ……柏原だけを」



執事はクスクスと背筋が凍る程に美しく恐ろしい笑い声をあげる。



「貴女と、私の立場は最初から"同じ"だったわけか……」




その黒い黒い笑みにのまれていく自分が少し恐かった。