柏原の綺麗な顔が、すこし寂しそうに微笑んだ。

私は思い出した記憶を全て打ち明けた……執事は、ただ無言でそれを聞き入れる。




「貴女は、養子として紫音家に迎えられた訳か……」


私は、小さく頷く。
よく覚えていないけど、両親を失い……あの屋敷に連れてこられた。

おばあ様から、『今日からあなたの名前は"茉莉果"よ』と何度も説得するように言われ続けた。



震える手を、目の前の執事の頬に添えた。

あまり体温の高くない執事の頬だけど、それでも心細い時に、無償で抱き締めてくれる存在だ。




黒髪が揺れると、その整った唇が優しいキスをくれる。