「お嬢様、私はここにおります。お嬢様の傍におります……」


静かで優しい声。



「さあ、ゆっくり瞳を開けてください」



柏原に言われて、ゆっくりと瞳を開く。




「……がじゎばらぁ……」


「お嬢様、変な発声をなさらないで下さい。どうなさいました? お嬢様らしくない」


視界いっぱいに広がる、美しすぎる執事の微笑み。

そして、ふわりと暖かく抱き締められた。




「……もっ……もう夢じゃない?」


「夢ではありません。お嬢様は、今……現実に私に抱き締められております」




私、柏原に抱き締められている……


執事の首に腕を回して、ギューっときつく抱きつく。



「お嬢様……苦しい……さすがの私も、首をしめられては天に召してしまいます」


「柏原は、天国には行けないわ……性格が悪いもの」



クスクスと執事は、笑う。



「ならば……供に墜ちましょうか? 地獄に、どこまでもお供いたします」



いいえ、柏原
多分私は、天国よ。


ごめん……