────「お嬢様、『事件が無事に解決した』と知らせしましたところ旦那様と奥様は、オーストリアでのコンサートが終わり次第帰国されると陽子さんから連絡がありました」



そうなのね……

お父様とお母様は、オーストリアで大切なコンサートがあるのね。



「お嬢様……大丈夫ですか? 私がご両親の元へお連れしてもよろしいのですが」


柏原は、醜く哀れな者をみるように私を見つめる。

まるで、私が両親に捨てられたみたいな物言いだ。



「いいのよ。別に大丈夫よ」


「お可哀想に……貴女はいつも独りだ」


そして、執事は優しく微笑むのだ。




醜く哀れな私に微笑みかけてくれるのは、世界でただ一人。

自分しかいないだろう? と威圧的な笑みだ。