「それは、私があなたが好きで一緒にいたいからよ。他に理由がいるの?」


 よし、完璧だわ。さらりと告白。そして、紫音茉莉果らしい態度。合格点ね。


「だから! それがなんでだ? って聞いてるんだよ!」


 なんでだ、って……困ったわね。予定では、ナツは感激の涙を流すはずなのに!



「イケメンだからよ」


 それ以外に理由なんてないわよ。

 どんな答えを期待してるのかしら?




「帰る」


「えっ? ちょっと待って!」


 ナツは立ち上がり、大理石の床を踏み鳴らすと、この個室から通路に出るための扉に手をかける。

 はやく食べないと、氷器が溶けちゃうのに……

 ナツって意外と本物のワガママなのね。



「お願いナツ……器が………」


 でも、だめよ茉莉果落ち着いて。


 さっき、ナツが教えてくれた。THE青春の甘酸っぱさ。

 ナツはドラマみたいな展開を期待しているんだわ。そうよ、絶対にそうよ。


 私は女優。ナツを虜にしてみせる!