「わかったわ! 出ていくわよ!」
柏原から手を離すと、私は勢いよくソファーから立ち上がる。
「出ていけ!」
偉そうに腕組みして視線を反らす柏原。
「もう一緒に寝てあげないんだからっ! タイで縛られるのも……もう嫌よ! 大嫌い!」
ドスドスと床を鳴らして、部屋の出口に向かう。
嫌い嫌い嫌い嫌い!
柏原なんて情緒不安定なくせに、急に偉そうにしちゃって!
信じられない!
「おい! メイド止まれ」
ひげ面が、おもちゃの銃みたいのを私に向けた。
「うるさいわねっ! 私は、紫音茉莉果よ! 出ていくって言ったら出ていくの! この不細工ひげ面っ! 私に命令するんじゃないわよっ!」
通路をドスドス歩いていく。
「えっ? 紫音……?」
ひげ面達は、一瞬ポカンとしていたが
「おい! 待て!」
玄関ホールについた私に、ひげ面兄貴が銃をむけた。
「この銃が恐くないのかっ!」
「そんなオモチャ恐くないわよ! ひげ面っ!」