「不味いぞ……サツに取り囲まれた」
「くそっさっきの男が通報したんだ!」
「人質を使おう、銃を持て」
ひげ面三兄弟は、何か忙しそうにしている。
三人お揃いの、サングラスをかけて、帰りの支度を整えだした。
もうすぐ、帰っちゃうのね? しまったわ……あんまりに非礼で不細工だから、お茶を出すのを忘れてしまった。
「あのっ!」
ひげ面が私を見る。
柏原は、「おい……」と小声で私を責めるけど「任せて」と返す。
「そこの棚の中に、エジプトのピラミッドの石があるわ。よかったらお土産にどうぞ……焼きたてのマフィンも今包むわね?」
お茶を出さないのなら、せめて、お土産を渡さないと。
おばあ様は、いつも庭の花や焼き菓子をプレゼントしていた。
三人は相談を止めて、疑わし気に棚を開けている。
中には、ピラミッド石とお母様が買ってきた変なツタンカーメンみたいな仮面が並べられてある。
別に要らないわけじゃないのよ? 処分に困り果てていたわけじゃないのよ?
ニッコリと微笑むと、ひげ面は首を傾げた。
「市場価格、億はくだらない名品だ……」
すると柏原が、残念そうに呟いた。
「億っ!?」
ひげ面三兄弟は、顔色を変えたのだ。



