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「兄貴……どどっどどどうする?」
「なななんで、警備会社がくるんだょう!」



「とりあえず、無視しとけば大丈夫だろう。この家の金目のものを奪って、人質を連れて逃走する準備をしとけ」




――ドンドン!
「紫音さ~ん。先程連絡した者ですけど~」


間抜けな声が、エントランスから響く。

兄貴と呼ばれるひげ面は、けっこう頭が働くひげ面らしい。あまり動揺せずに、落ち着いている。


それならば、せめて靴の泥を落としてから侵入してくれればいいのに……

誰が掃除すると思ってるのよっ?




柏原よ!



「紫音さぁん、お留守ですかぁ~」


警備会社の人なら、もっと強そうな声をしてくれたらいいのに、明らかに人事ミスよ。



ガッシャーン!

「キャッ」

柏原が突然、キッチン台にのっていたガラス製のボウルを蹴り飛ばす。

後ろ手を縛られたままの執事の長い足が、器用にボウルだけを蹴ったのだ!

それは、スローモーションにして目に焼き付けたいくらいに芸術的な身のこなしだった。




「何しやがるっ!」

ひげ面兄貴は逆上して顔を真っ赤にして……ガツッ!! と鈍い音をさせて……


ななな!?

なんと!
銃で柏原を殴った……


「やめてっ!」


かなり強い力で殴られた柏原は、キッチンの床に倒れた。


「余計な事しやがって!」



よ……余計な事したのは、あなたよ!

この不細工ひげ面!



あなたは、不細工だからいいかもしれないけど!



私の柏原は、顔が命なのよ!

よくも殴ったわね……


私は言い様のない怒りが沸々と込み上げてきた。