小さな頃から弾いてきたヴァイオリン。
私には、お父様とお母様と同じような音楽の才能がない。
「ハイ、モウイチド~」
明るくリズムをとるセルマン先生は、世界的にも本当に有名なヴァイオリニストだ。
日本でのコンサートチケットは、すぐに完売してしまう。
以前に、旅先でとてもヴァイオリンが上手な女の子に会った事がある。
名前も、顔も忘れてしまったけど……
もし、私がその女の子みたいにヴァイオリンが上手ならば……この屋敷でこんな惨めなレッスンを受けてないはずだ。
きっと両親と同じ舞台に立っていたに違いないわ。
それに、セルマン先生の当初の目当ては柏原だった。
柏原の尻を撫でまわしたかったセルマン先生……だけど、私の記憶が正しければ一度も柏原の尻に到達できていない。
柏原には隙がないからね。
セルマン先生はいつでもレッスンより柏原の尻を狙いに来てるのよね。
Ra~Ra~♪
私の必死の音。
先生は目を閉じて一生懸命聞いてくれている。
だけど耳障りな音に聞こえているに違いないわ。



