「私は、ナ……ナツって呼んでもいいかしら?」
「別に、いーけど」
ナツはプイッと私とは反対の窓の外を見てしまう。そんな仕草が可愛らしく、ますますナツに引き込まれる。
「食事はいかがかしら? 激しい運動の後は、お腹がすくでしょ?」
ナツは、返事をしない。
「柏原、支度を整えたあと……予定していた場所へ」
「かしこまりました、お嬢様」
柏原はチラっとルームミラーで私達を確認する。
『問題ないわ』と綺麗に微笑めば柏原も安心するだろう。
多分柏原は心配で心配でたまらないはずだ。きっとお父様の心境に近いのかもしれない。
大切な娘をイケメンに奪われて悔しいのだろう。
ここはぐっと我慢よ、柏原。私の幸せだけを願ってちょうだい。