「いらっしゃいませ竜司様。人様の屋敷の庭園からいらっしゃるとは……西原家の品位を疑われてしまいますよ?」
柏原は怒りを溜め込んだ冷酷な声をしていて、とても客人を迎えた執事とは思えない。
「だって! 玄関のチャイム鳴らしても出てこないからだろっ? 何してた! 暗黒執事! 茉莉果ちゃんに何してたんだっ!」
竜司は、威勢良く執事に啖呵を切る。
だけど、執事の冷たい視線に「うっ」としり込み、私が座る(正確には、腰が抜けて動けなくなっていた)ソファーに飛び乗る。
「変なことされてない?」
「大丈夫よ。ちょうど押し倒されたばかりだったから」
「おっ……おっ……おっ……押し!?!?」
竜司は、みるみる顔を赤くさせていく。
あら?
コアラには刺激が強かったのかしら……
「使用人! 茉莉果ちゃんには触るなっと言っただろ!」
どの様な権利が竜司にあるのか知らないが、柏原が触ってくれなくなったら……私は悲しい。
「その話の前に……竜司様」
柏原は、ズイッと竜司に歩みより真剣な眼差しを向ける。
「なっ……なんだよ?」
竜司はビクッと肩を震わせ私の影に隠れる。
「どうやって庭園にお入りになったのですか?」
「えっ? エントランスの脇に扉があったから、開けたら庭園に…………」
「それは、困りました」
柏原は腕組みをして、唸りながら部屋をゆっくりと出ていく。



