「お金で解決? 貴女はまたよからぬことをお考えですか?」
執事の顔が酷く歪んでゆく……
優しい微笑みは、黒い悪魔の微笑みに変わり。
その美しさが際立つ。
全身に鳥肌が立ち、気がつくと彼にフワリと押し倒されていた。
執事がクスクスと笑い声をあげて、私の両手をソファーに押さえつける。
「はしたないお嬢様だ。いつから男を視姦(しかん)する趣味をお持ちになられたのでしょう?」
鹿ん?
分かったわ!
鹿といったら"鹿せんべい"か"鹿の剥製"のことよね!
柏原は、鹿の話がしたいのね?
だけど、貴方はとっくに知ってると思っていたけど……私に鹿の剥製(はくせい)を集める趣味なんてない。
「私は、命を無駄にするのは嫌いよ。柏原」
剥製なんて可哀想だ。
野を駆け回り、寿命で死ぬならまだしも……人間の都合で死を迎え、その体を固めて飾られるなんて最低よ。
「私を、殺害なさるおつもりですか?」
その笑顔は、何を考えているのか全く予測できずに、私はただ執事にみとれていた。
綺麗な顔ね……
柏原の剥製?
ある意味、高額商品になるかもしれない。
美形執事の剥製……
口うるさい美しい執事、剥製にしてみるのも悪くないかも……
「貴女に殺されるなら本望だ……」
柏原に、奪われた唇
冷たく薄い唇は私の体温をも奪っていく。
フッ……と放たれた吐息と、暖かな手が私の両頬を包む。
手は、暖かいのね? 柏原
持ち上げられた顎、苦しくなって「……んっ」と声をあげた隙に、執事の舌が私を責めるように攻めたてる。
「……かっ……しわばら」



