「そう。そういうところだよ。 
オイ使用人! くすくす笑ってるな!」


「おや、失礼いたしました。茉莉果お嬢様、ショッピングに行かれるのでしたらそろそろ参りましょう。カナダの夜は非常に冷えます。夕刻までにはホテルに戻り、思い出の夜を過ごしませんか? 二人だけで」

「いいわね。行きましょう。私、毛皮のコートと毛皮のブーツと毛皮のバッグが欲しいわ。それから、竜司が言ってたメープルシロップ、メープルクッキー、メープルティーも買わなくちゃ。柏原、コートの用意を」


「かしこまりました、お嬢様」




「くそっ……僕より、執事とショッピングか……」


「あら、竜司。私、あなたとならお友達くらいになってあげてもよくってよ」



「無自覚どS……恐るべし……オイ使用人! くすくす笑ってるな!」



竜司は慌ただしく荷物をまとめだす。


「使用人! お前に、いつかもう一度勝負を挑んでやる! このままメキシコに飛んで腕相撲の修業してきてやる! だから僕の茉莉果ちゃんには、指一本触れるなよ!」

捨て台詞を残し、スイートルームを飛び出していった。