「ふざけんな隼斗。なんで俺が知らねー女について行かなきゃいけねーんだっ…………ぐっ!」


 ナツは、まだツンデレ演技を続けた為に、隼斗に脇腹をパンチされて静かになる。

 意外と空気読めないのね、ナツ。私が待ってるのだから早くしなさいよ。


「茉莉果さん、コイツ行きます」


 隼斗が白い歯を見せ健康的な笑顔を見せながら、親指を突き上げた。


「そう? ありがとう。外で車を用意して待ってるわ」

 くるりと踵を返し、ナツと初めてのデートに浮き足がたった。

 柏原の元に戻り、その前を通過すると……何も言わずに一歩後を歩いてくる有能な執事。

 プライベートの干渉は禁止されている為に、私から話をしない限り余計な事は聞いてこないのだ。


「車は?」

「ご用意できております」

「じゃあ、ナツを連れてきてちょうだい」


「私は誘拐犯になりませんでしょうか? お嬢様」


 誘拐犯?

 ああ、ナツを誘拐して来いと聞こえたのかしら?


 理解力がないわね。


「承諾はとれてるわ」

「かしこまりました」


 こうして私は人生初のデートが幕を開けた。

 男性に対して、こんなに積極的になったのも初めてだもの緊張しちゃうわ……