────ホテルの温かいロビーに戻る。
全身倦怠感に襲われ中。
お昼寝しないと体力が持たないわ。
叫んだり追いかけたり走ったり。
悪夢のような一日ね。
おまけに、どうしよう……
お父様になんて説明したらいいのかしら?
トボトボと歩く私達に、先程のコンシェルジュが近付きポケットから何かを取り出した。
それを柏原に手渡す。
黒いタイだ……
さっき、不貞腐れたバージョンの柏原が捨てたやつだ。
執事バージョンの柏原は、それを丁寧に受けとると、襟を立て手早くタイをしめなおす。
そのまま無言で乗り込み最上階のボタンを押した。
エレベーターには、私達二人きり。
「愛してるわ……柏原」
「…………」
静かに上がっていくエレベーター。
柏原は答えない。
「でも、それだけではダメだわ……私達」
「同感でございます、お嬢様」



