私、こんなに貴方を愛してる。
「茉莉果様。我々は、所詮、お嬢様と執事にございます。私はこの想いを胸に秘め、いつか溢れ出して止まらなくなる時がきたならば執事を辞めるしかない、そう決めておりました。
答えはいつもそこにたどり着く。
さあお嬢様、予想以上に……カナダの芝は、冷たいです。そこを退いてはくださりませんか?」
柏原の腕が私の背中に回る。
柏原はいつもそうやって自分だけで答えを見つけてしまう。
「お嬢様も、こんな薄着で外に出られては、お風邪を召されてしまいます」
「そうね……バイ菌気軽国家だったわね……」
「また、貴女は見当外れな事をおっしゃる」
柏原は、私を抱いたままゆっくりと立ち上がり芝を叩いて落とした。
「けんとうはずれ? 失礼ね。私の判断はいつも的確よ!」
「そうですね。ところで、私はお嬢様を縛り上げて嬉しそうな顔をしておりましたか?」
「してたわ……とても嬉しそうだった」
「さようでございますか」
観光客は完全にギャラリーのように私達を取り囲んでいる。
カナダ人も、集まっていた。
「皆様、ご協力ありがとうございました。撮影は無事に終了しました。あちらのビルの二十三階にカメラと撮影スタッフがおりますので……私達はこれで失礼いたします」
柏原が、ニッコリと微笑み一礼をするとギャラリーから拍手がわき起こった。



