「柏原の性悪っ! サイボーグ! 悪魔! 執事辞めるなんて、絶対に許さないわよぉぉぉお!!!!!」


柏原は止まらない。



「そこの変態男! 何度もキスして、私の下着姿まで見たくせに! それに私をネクタイで縛りつけて嬉しそうにしてたクセにっ! そこの燕尾服で黒髪の男っ!」


青々とした芝生の広場。

すぐ近くには、さっき竜司と見たタワーがたっている。


「結局、お金目当てなのねっ! 私の事を弄んだのねっ!」


日本人らしい団体観光客が写真撮影をしながら、私達を見比べている。


「ドラマの、撮影かしら?」「あの人、カッコいい……」

やっぱり、日本人ね?


「縛り付けてエッチなことなんて、誰からもされたことなかったのよ!」 


ザワザワっと団体客が騒ぎ、ジッと柏原に視線を注いだ。



柏原がピタリと停止する。



こちらを振り返ると、酷く恐ろしい顔をしていた。


「逃げてなんかいない! 好き勝手な事を言うな!」


「逃げてるじゃない! この意気地無し! 最低! ヤり逃げ男!」



「やってないだろ! 被害妄想もいい加減にしろ!」




私は柏原目掛けて猛スピードで走る。



もう絶対に逃がさないんだからっ!!



止まったままの柏原に、猛烈タックルをかますと、芝生に押し倒した。