おま……


『おまえ』って言ったの?

あの柏原が……



不貞腐れた不良のように、舌打ちをするとタイを引き抜きエレベーターの床に投げ捨てた。

ワイシャツのボタンを2つ外す、それから壁に背中をつけて長い足を組むと、またため息……




いやぁ……



あの可愛かった頃の柏原を返して!!



ため息をつきたいのは私よ!

なんて傲慢な態度なの!?



エレベーターが『L』を示し点滅する。

扉が開く。

笑顔のコンシェルジュが私達を出迎えてくれた。





不良の柏原は、不貞腐れた態度のままズボンのポケットに両手を入れて歩き出す。



笑顔を崩さないコンシェルジュだけど、首を傾げた。



「ごめんなさいね……柏原も、元はあなたみたいだったの。今は、極道のそっち系の人みたいになっちゃってるけど、

とても有能な執事なのよ」


コンシェルジュは、笑顔のまま首を傾げて「エクスキューズミー」と言った。


そっか、私はカナダ語がわからないのよ……