「さあ、はじめよう。挑戦者竜司くん……一言お願いします」


ビクリと震え上がる竜司、普段は真ん丸の目をしているけど、その目を細めて柏原を睨みつける。



「僕が勝てば、必ず茉莉果ちゃんを幸せにする」


お父様が手を翳すると、一同静まり返る。




私の結婚が決まるのだ。



睨み合ったまま、手を組む柏原と竜司。


本気で間抜けだわ……



「レディ……ゴォー!」



お父様の合図も、かなり間抜けよ!


柏原と竜司は、俊敏に反応して力がぶつかり合う。


一瞬、互角のように見えた。


だけど、よく見ると顔を赤くして渾身の力を込める竜司に、無表情で涼しい顔をした柏原。


勝負あったわね────



柏原は細く見えても、そのしなやかな身体には かなりの筋肉がついている。

私を軽々と持ち上げてしまうくらいだ。

竜司なんかに、負けるとは思えない。



「くーッ!!!!」


竜司は何度も体勢をたて直して、柏原に挑む。



「茉莉果様……
申し訳ございません……」


何?

何を謝るの?


「柏原っ!!」


まさか……

わざと負ける気じゃないわよね?




「本日で執事を辞めさせていただきます────」