ところで、なんの勝負なのかしら?




ホテルのスィートルームの一室。

お父様が突如、円テーブルを用意した。

そこは勝負の場と変わる。



「勝負だ。竜司くんが柏原くんに勝てば茉莉果との婚約を認める」


わ、私の意志は関係ないの?

興奮したお父様は切り株の上に立ちあがる。


「あんまり、揺らすと危ないわ……あなた。まだ根っこが完全に乾いていないのよ」

お母様のアドバイスを受けて、お父様は強く頷く。

これからオーケストラの指揮をする指揮者のように気合いが入った表情のお父様。


竜司は青ざめた顔で、呆然と問う。



「僕が、この執事に負けたら……この話はなかった事に?」


「残念だが、そういう事だ。つまり柏原くんに『腕相撲』で勝てる相手じゃないと茉莉果の婚約者としては認めない」


うっ……腕相撲?


私は、力なくフラフラとソファーに倒れ込む。


「ああ……旦那様……そのような馬鹿げた事で」と陽子さんまで、床に崩れ落ちた。


おっ……お父様?

本気で、娘の将来をお決めになられるおつもりですか?


私は、軽く裏切られた気分だ。


だけど柏原が勝てば竜司との結婚話がなくなる。



「柏原、負けたら殺すわよ」


近くにあった、キャンドルスタンドを握りしめると、柏原はフイッと私から顔を背ける。



なっ……
なによ!

人の将来握っておいて
あの態度?