「茉莉果ちゃんのご両親が滞在しているのは、トロントだよ。マイケルに送ってもらおう」
「とろんと?」
なんだか、美味しそうな名前ね。
さすが、お父様とお母様だわ。
「さぁ、車に乗って。ミートパイを食べよう。屋敷で、茉莉果ちゃんが食事を残してばかりいると寧々さんから聞いて心配してたんだよ。食べたいものがあったら何でも言ってね」
大きな車の中は、毛皮のシートが敷かれていて快適で暖かい。
席と席の間には、テーブルとカップホルダーがついていて、マイケルが飲み物を用意してくれていた。
「メープル街道通るかな? トロントは、オンタリオ州の州都だ。街並みが綺麗で、僕も大好きだ」
メープルシロップがトロントしたプリンみたいな街並み?
私も大好物だ。柏原と一緒に食べられたらいいのに。
車がゆったりと、広いロータリーを回る。
竜司は、紙に包まれたミートパイを食べやすいように開いてくれた。
「熱いから気を付けてね。茉莉果ちゃん……火傷しないでね」
竜司は、過保護だ。
コアラのくせに、気遣い上手だ。