「茉莉果ちゃん! 写真でも撮ろうか? 出発記念に一枚」
竜司が、携帯電話のカメラをむける。
「はい、笑って」
馴れ馴れしく肩を組まれての記念撮影。
携帯からカシャと音がして、私は竜司の手を叩き落とす。
「気安く触らないで! 飛行機から突き落とすわよ!」
「あはは、ごめんごめん」
柏原がいなくなってから、私はずっとイライラしている。
竜司は、「メールを送ろう」と言いながら満足そうに笑っていた。
そんなにメールが楽しい?
「うちにいる使用人に、メールしたよ。あんまり心配かけるのも悪いから。仲良くしてるの見せとけば安心だろうしね」
うちにいる使用人……
使用人にメールなんてしたことがないわ。
自分の携帯を取りだし『柏原』の番号を表示させた。
アドレスなんて登録すらされていない、だけどそれはどんな時にでも柏原が傍にいてくれたから……
そうよ!
電話してみたらいいのよ!
なんで気がつかなかったんだろう!
発信ボタンを押す。
それと同時に竜司の携帯が鳴った。
「ごめん、うちにいる使用人から電話だ」
そう言うと竜司は、慌てて席を立つ。
「もしもし……うん。2人で大丈夫……仲良くしてるよ。心配いらない」
会話を続けながら、席を立つと柱の影に消えていった。



