トントン!
今度は強く叩かれる。


「お嬢様開けますよ?」


ふんっ
開けられるはずがないじゃない!

鍵かけてあるんだから!


──ガチャッ

解錠する音と、嫌いな使用人と魚を焼いた臭いが部屋に入る。


私は羽毛布団を頭までかぶった。


臭い臭い! 柏原なら焼きたての甘いスコーンの香りをさせてくる!



「なんで鍵もってるのよっ?」


「柏原さんから、預りました。だけど、あの方は一度も使った事がなかったようですね」


当然だ。

柏原は、私に鍵をかけさせるような嫌な事はしなかったもの……


「さぁ起きて、朝食を食べましょう」


「嫌よ! 出ていって!」


「ふふ本当に可愛いお嬢様。柏原さんが、ご執心なさる気持ちがよく分かります」


なによ……
子供扱いして私をバカにしてるのね?


本当に頭にくる女だわ……


陽子さんは、ベッドサイドまでやってきて優しい声で語りかけてきた。


「お嬢様が、柏原さんを大切に想われているお気持ちよくわかります」


「絶対に、あなたは何もわからないわよ」


「柏原さんが、お嬢様を想っているのも私は知っています」


「だったら……なぜこんな事をするの?」


「こうする事が、お二人にとって一番良い事です」