────私の気分とは裏腹に、綺麗に晴れた朝がきた。
いつまで待っても柏原は私を起こしに来ない。
ドレープのかかったカーテンを自分で開けて、窓から柏原の住むマンションを見上げた。
手を振ったら見えるのかしら?
私が大きく手を振ってみても、その窓には人影すら見えない。
柏原はどうしているのかしら?
竜司とな色んな話をした。
彼には兄弟がいること。学校の様子。私の両親と会った事があるって話しもしていたっけ?
そんな事は、本当にどうでもよくて……私はただひたすら柏原を待ち続けた。
「おはようございます。茉莉果様」
柏原の代わりに私の部屋に来るのは寧々さんだ
。
部屋の開かれた扉からは変な匂いがする。
この匂い……
「魚…………焼いたわね?」
「竜司様は、朝食は和食や焼き魚などをお召し上がりになられますので……」
「そんなの知らないわよ! この臭いがなくなるまで、私は部屋から出ないから! あなたは、出て行きなさい!」
「茉莉果様っ!?」
もう!
信じられないっ!
朝から魚を焼くなんて……動物愛護団体に捕まればいいんだわっ!
私は焼き魚が大嫌い!
寧々さんを追い出して、部屋の扉に鍵をかける。
あ……臭い。臭い。
バッと、窓を開け放ち。もう一度ベッドに潜り込んだ。
トントン……
「茉莉果様、陽子です。扉を開けてください……」
よりによって、気分が悪いのに嫌いな女がやってきた。逆効果だってわかってないのかしら。
さっさとお父様とお母様のところに自分だけ帰ればいいのよ。嫌みな女ね。大嫌い。



