冗談でしょ? なんであの柏原がコアラの命令にこたえるのよ。

鼻で笑って有り得ないくらいな態度で命令を無視するのが、私の知ってる柏原よ。


「茉莉果ちゃん!」


屋敷に戻って、執事を呼ぶ。


「柏原っ出てきなさい!! 私が呼んでいるわよ!!」


ダイニングテーブルには、配置がされた料理がのっていた。


竜司の分と二人分が用意されていた。




「柏原! かくれんぼなの? 見つけたらただじゃおかないからね! 柏原!」


スープやサラダ、それとオムライスが湯気をたてている。


「柏原様から茉莉果様は、オムライスやハンバーグなどがお好きだと伺いましたので……竜司様も、お好きですし。どうか夕食の席についてくださいませお嬢様」


「あなたにお嬢様とか言われたくないわよ! 私は柏原のお嬢様なの!」


「ですが茉莉果様、柏原様にも何かお考えがおありなのかもしれませんよ。例えば、あなた様のわがままに疲れたとか……」


寧々さんは私の耳元で囁き微笑むと私の椅子をひいた。


「さぁ、茉莉果ちゃん。夕食にしよう」


楽しそうな竜司。


柏原が疲れた?

そんなはずないじゃないの……


「さあ、茉莉果様。わがままを言わず紫音家ご令嬢としての振る舞い見せてくださいな」


力なく椅子に座ると、竜司も席についた。そして寧々さんに「ありがとう」と微笑んだ。





勝手に出ていった執事は……どうしたらいいのかしら?

私を、お姉さんコアラに預けて消えてしまうなんて、酷すぎる。


オムライスにスプーンを入れるとフワフワな感触。

一口食べると、チーズと卵が絶妙に合わさる。



でも、全然ダメね。

柏原のオムライスには程遠いわよ。