「────離して、竜司」


「ああ、ごめん!」


竜司は顔を真っ赤にさせた。


「答えは焦らなくていいからね。それよりも僕たちは、色んな事をわかり合わないといけないね。夫婦になるんだから」



竜司は、私の手を大切そうに取ると優しく微笑んだ。

でも、だめ。全然どきどきしないもの。

柏原に同じことされたら、私の心臓は大変なことになってる。


「こうして、少しずつ時間を重ねていけば……きっと、わかり合える時がくるよ」



でも私、コアラがユーカリの葉っぱを食べて木の上で眠る気持ちだけは分からないわよ。

というか、柏原とわかり合えてるからいいの。

それで満足。お腹いっぱい。


「失礼します。竜司様、茉莉果様、夕飯の仕度が整いました」


私達に一礼をするのは、柏原じゃなくて竜司が連れてきた綺麗なお姉さんコアラだった。


「おかしいじゃない。なんでお姉さんコアラが夕食を作ってるのよ!」


私は柏原の料理しか食べないわ!


「ありがとう。茉莉果ちゃん、これでいいんだよ。寧々さんは料理がとても上手だから安心して」


寧々さんは、嬉しそうにして竜司に恭しく頭を下げた。

女の勘よ。

寧々さんは、絶対に竜司が好きだわ。間違いない。私、こういうのだけは鋭いのよ。