竜司に引っ張られて、バラの香りが漂うローズガーデンへときた。


おばあ様が大切にしていらして、今は柏原が手入れしているローズガーデン。

今年も綺麗な大輪の花を咲かせ、芳しい香りを放っている。


先日、ここで柏原にローズヒップティをいれてもらったのよね……
天気がよくてひなたぼっこしながら楽しんだっけ。



「茉莉果ちゃん突然で驚いたでしょう? 僕もまさか快諾してもらえると思わなかったから、本当によかったよ。うちの両親もはやく茉莉果ちゃんに会わせろってうるさくて!」


「えっ……? そうなの」


竜司には、最初から驚かされ続けているわよ。

前世がコアラなんて、そこが一番びっくりどっきり。



「でも茉莉果ちゃんは、あの執事に騙されてる。普通に考えたら良家どうしの結婚を邪魔しようとする執事なんていないよ……」


「柏原を悪く言うのは止めて!」


「君の事は、僕が絶対に幸せにするから……あの執事とは離れた方がいい。君のためだ」



大輪の薔薇に囲まれて、私は竜司にキツく抱き締められた。



「はなしなさい! 竜司」

屋敷の窓から、こっちを見ている柏原と目が合う。



「柏原!」


だけど、柏原は目を反らすと屋敷の奥へと消えていく。




柏原、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているのに私の所に来てくれないのかしら……






「……大好きだよ、茉莉果ちゃん」



私、この言葉を柏原から言われたい。



────大好きですよ、茉莉果お嬢様って、柏原のその低く美しい声で甘く囁いて欲しい。