「また、あなただけ帰ってきたの?」


前回陽子さんが、一人で帰ってきた時は……


まさか!?


「柏原!! また家出するつもり? 私は、ベアトリーチェごっこは嫌よ!」




柏原が家出した時に、陽子さんが一人で帰ってきたんだったわ!


今度は逃がさないわよっ!


柏原のネクタイの端を、ムギュと掴む。

ちょうどいい所にぶら下がっていたわ。飼い犬のリードみたいで、バッチリね?

グイッと私の執事を引き寄せる。


「いいえ、今回は私の職務怠慢とは関係ございません」


柏原は、すごく不機嫌そうに答えた。


「お嬢様、お客様がお待ちかねでございます。客間で話ましょう」


陽子さんは、柏原ネクタイを掴んで私を引き離す。


「嫌よ! やめて」


リードがないと放し飼いになっちゃうじゃない! 柏原がどっか行っちゃう!


今度は、シルクの燕尾服をムギュと掴むと……陽子さんはあきれたようにため息をついた。


「まったく……よく飼い慣らしたわね。柏原さんには後でみっちりとお話があります」


「かしこまりました……」