チョコレート色の濃いブラウンの木と、曇り硝子のメインエントランスのドア。

柏原がゆっくりと開き、一礼をする。私はその前を、あごをツンとして通過する。


「ありがと」と言って、屋敷へと入る。


いつものことよ。



でも



「おかえりなさいませ。お嬢様」

そこには、普段はいないはずの使用人が待っていた。




「陽子さん!? あなたカナダにいたんじゃないの?」


彼女は、今頃カナダにいる両親の音楽活動をサポートしてくれているはずなのに
なぜ、屋敷にいるのかしら?

ってことは……


「お父様とお母様も帰ってきているの?」



両親が、どこから飛び出してくるのだろう……と身構える。




「旦那様と奥様は、まだカナダにいらっしゃいますよ」


ムカつく態度で陽子さんが笑った。
ああ、腹がたつ!!