「どちらかと言うとお嬢様が、あの方を騙しておいでだったのでは?」


「なぜ? 私は、ただ竜司とお友達になれるかと思ってたのよ。しかも船に乗るならイルカを見たかったのよ」


可愛いんだから!
柏原も、あの姿を毎日見ていたら
たちまち、その暗黒ベールが剥がれ落ちるかしら?

感受性の問題かしら?



「その様な常識はずれな見解と、その思わせ振りな態度と、その美貌、はっきり言わせていただけば……貴女は男を誘う悪女のようだ」


「主人に向かって、何て事を言うの?」


柏原は目を細めて、私を上から見下ろす。

それからベットに腰をかけて余裕の笑み。






私の目を真っ直ぐに射抜く美しい瞳。

「誰よりも主人を想う執事として、言わせていただきたい」


サッと伸びた左手は、頬に添えられた……

柏原の綺麗な唇が、私の唇にそっと触れた。






ダメだ……


やっぱり"嫌"じゃない。
竜司のように拒否できず、そっと目を閉じてしまう。