「ごめん、びっくりさせて」
「い、いいのよ……」
「――お嬢様、ただいま戻りました」
柏原っていつも気配がしないのよね……
すっと扉が開いて、黒い燕尾服姿の柏原が姿を見せる。
「おかえり、柏原! こっちに来て」
私は竜司を押し退けて、体を起こそうとする。
だけど、強引に竜司に抱きしめられた。
なに、盛ってるのよ!
相手をよく見なさい!
私は人間よ!
「離して!」
「使用人はしばらく、出ていっててくれないか? 今は、将来を決める大事な話をしているんだ。それに茉莉果ちゃんの看病は僕一人で十分だ」
コアラ……
威嚇行動のつもりかしら?
凄味をきかせた睨みは恐ろしいけど、柏原の睨みは百倍恐ろしいわよ!
それに、私を抱きしめるなんていい根性してる。
世界中のユーカリの木を伐採してやるわ。後悔しなさい。
「それは、大変失礼いたしました……」
「わかったなら、早くでていけ」
「竜司、あなたユーカリがどうなってもいいの?」
「えっ? ユーカリ?」



