────そしてコアラと約束した日がやってきた。


「何しに来たのよ、麗香!」


「まぁ! 親友に向かってなんて口の聞き方なの?」


今日は竜司の船でクルージングに連れて行ってくれるっていうから楽しみにしてきたのに、麗香のせいで気分がガクンと急降下。


クルージングなんて滅多にしたことないのに……
お父様とお母様もおばあ様も船の旅だけは連れて行ってくれたことないのよね。



「お嬢様、酔い止め薬を飲まれておいた方がよろしいかと」


柏原はいいのよ。一緒でも

前に、ナツとデートした時に執事を置き去りしたのを後悔したのだから……



だけど問題は麗香よ。
デートに親友は必要ないわ。


「ごめん……茉莉果ちゃん。本当は2人だけのクルージングがよかったんだけど……麗香に知られちゃって、『連れていけ』ってうるさくて」


可哀想なコアラ。悲しそうな顔してる。


「竜司、大丈夫。邪魔はしないから! 茉莉果をどうしようと、私は何も言わない。でも海底に叩き落としたくなったら言ってね? 私も手伝うわ」


麗香は軽くウインクすると、豪華な船内のキッチンで水をグラスにいれている柏原を見つめる。


「柏原様、本日も素敵ですわ。なぜアホな茉莉果の執事様などやっていらしゃるのかしら」


胸元のあいたカクテルドレスに、パーティのようなヘアメイク。

麗香が、柏原の隣に立つ。

悔しい……私は自分の胸元に結ばれた大きめのリボンに目をやる。


可愛らしいワンピースは、海外でお父様がオートクチュールしてくれたものだ。

だけど、麗香のカクテルドレスと比べると子供っぽいデザイン。