でも……


「またの機会に誘ってくださる? 今日は柏原に、とろけるようなディナーを約束させてあるの」


溶けたチーズがふわふわ卵と合わさり、さらに添えられたデミグラスソースの絶妙なハルモニーを醸し出す。

柏原のオムライスは最高なのよー。


本当に、お腹すいた。



「またの機会……うん。いいよ、そうしよう! 今週末、デートに誘ってもいいかな? 使用人には真似できないような素敵な時間を約束するよ」


「わかったわ。いいわよ」



コアラが、そこまで言うのなら私も誘いを受けなくては、動物愛護団体からクレームがきてしまう。


コアラとデート……

ユーカリの葉っぱでも食べるのかしら? ふふふっ笑っちゃう。


是非、間近で見てみたい。


「これ、僕の連絡先だから」

差し出された名刺を受け取ろうと手を伸ばす。


すると、柏原が代わりにコアラの名刺を受け取った。

通常執事が、主人に差し出された名刺を受け取る時は明らかに相手が下位の時だけだ。

コアラの竜司は、もちろん怒った顔をする。


「本日は、私がお預かりさせていただきます。失礼な事に主は名刺のご用意がありません。代りに、誠に僭越ではございますが私の名刺をお受け取りください」


柏原は、コアラでも掴みやすいように自分の名刺を手元に握らせてあげた。

中々優しいわね?
柏原でも、動物愛護の心があるのね?


「主への、連絡は私を通してくださいますよう……お願い致します」


コアラに、律儀で綺麗なお辞儀をすると柏原は私の手をとる。


「さぁ、お嬢様……蕩けるようなディナーにいたしましょう」


「えぇ」


やっと、オムライスね!