「柏原、遅かったじゃない。待ちくたびれたわ」

ベルガモットの香りが残るアールグレイを飲み干し、柏原に抱きつく。


「申し訳ございません」




「お腹すいたから、はやく帰ってオムライスが食べたいわ」


柏原は、優しく私の背中に手を添えると……小さなため息をつき小声で話す。


「茉莉果様、知らない男性と話してはなりませんと申し上げましたでしょう」

「知らない人じゃないわ、彼は知り合いよ」


元動物だけど。

檻から出て自由を手に入れたコアラよ!



「僕は、中学の時に茉莉果ちゃんと仲良くさせてもらいました西原竜司と申します。あなたは?」


「それは失礼いたしました。私は、茉莉果様の執事をしております、柏原と申します」


コアラは顎に手を当て「なんだ……ただの使用人か」と呟く。


「茉莉果ちゃんと久々の再会を祝してディナーに誘おうと思っていました。茉莉果ちゃん、どう?」


紳士的に私の手をとる竜司は、キラキラとした笑顔を作るとイケメンと呼べなくもない。


本当に、このコアラは尊敬しちゃう……

元動物なのに社交性も抜群だわ。