「───お嬢様、本日十六時に映画の試写会への招待を受けております」



 試写会かぁ。久しぶりね。

 柏原から渡されたパンフレットに目を通す。


 この映画のサウンドトラックを、全てお父様が作曲している。そして、お母様が演奏した曲が挿入歌として使われているのだ。


 それから主人公がピアニストの役だけど、役者ってのは必ずピアノが弾けるからピアニストの役をやるわけじゃない。


 ピアノが弾けないのに、ピアニストの役をやる役者の為に演技指導や代弾きする人がいるらしく


 ようするに手の部分だけ違う人が弾いたものを、さも役者が弾いたかのように合成するらしい。その手の役を、お母様が演じるのよ。



 さっき柏原がそう教えてくれたの。